日本に兵役制度を導入すべきでしょうか?

 

 

日本に兵役制度を導入すべきでしょうか?

 

 財務省(2023)によると、2023年度予算の一般会計歳入は114.4兆円であり、この内の5.9%である約6.8兆円が防衛費として使われている[1]。防衛省・自衛隊(2022)のデータによると、日本には陸海空合わせて227,843人の自衛隊員がいる。6.8兆円にはこれら隊員の給料や食費はもちろん、軍事設備の維持費や装備品の供給費、そして最先端技術への投資費など、様々な費用が含まれている[2]。日本の普通国債残高は2023年末には1,068兆円に上ると試算されており[3]、1990年度と2023年度を比べると、歳入における公債費(借金)は6倍に膨れ上がっている[4]。国の借金が増加すれば将来の日本国民が使えるお金が減り、災害など、大きなお金が必要になった時にすぐに対応できなくなってしまう[5]。日本は周知の通り、地震大国である。さらに著しい高齢化によって社会保障費は増え続け、借金に頼る分も増えている[6]。既に大きく借金に依存する逼迫した財政下で、日本に徴兵制を導入する必要性は本当にあるのだろうか。

 結論を述べると、日本は徴兵制を導入するべきではない。その訳は主に経済的な側面に重きを置くが、それ以前に今の日本において、徴兵制を導入するに値する合理的な理由を挙げることが難しい。

 第一に、日本は既に軍事的に強国であり、Global Firepower(2023)の報告によると、日本の軍事力は世界145カ国中8位である。自衛隊を軍隊とは呼ばないが、日本は軍事力で世界TOP10入りするほど強い国である。その上、日本は日米安全保障条約によって米国から軍事的協力を受けることができる。外務省(1960)によると、日米安全保障条約の第5条は米国の対日防衛義務を定めており、日本領域の安全が脅かされた時、日本は米国と共同して防衛に当たることができる。米国は言わずもがな世界最大の経済力を持つ大国であり、軍事力も相変わらず世界1位であり続けている。このような日本の軍事的背景がある中で、さらに兵力を拡充する必要性はあるのだろうか。元々日本国憲法第9条が定めるように、日本は自衛に必要な最低限の力を保持することだけが認められており、今以上の兵力増強は、これ以上は憲法9条の解釈問題になるので深くは触れないが、憲法上も認められるのか怪しい。

 最後に、2023年現在、日本は戦争状態にはない。隣国の韓国では徴兵制があり、満20歳以上の男性は約2年間、兵役が義務付けられている。このことは韓国の自国防衛の視点から非常に理に適う。山下慶(2022, p.48)によると、韓国は今も北朝鮮と休戦状態にあるため、国家の安全保障の観点から一定の軍事力を保持する必要がある。したがって韓国が多額の予算を投入して徴兵制を維持することには、合理的にそうするのに値する背景がある。NHK(2023)によると、韓国は北朝鮮の脅威に備えて、2024年度の国防予算を2023年度比4.5%増の6.5兆円規模に拡大方針で閣議決定している。

 

注釈

[1] 財務省(2023)「予算はどのような分野に使われているのか」https://www.mof.go.jp/zaisei/financial-structure/index.html(最終閲覧日:2023年12月10日)

[2] 防衛省・自衛隊KIDS SITE「⑤国を守るために必要なお金」https://www.mod.go.jp/j/kids/wp/2022/special_contents/05.html(最終閲覧日:2023年12月11日)

[3] 財務省(2023)「日本の借金の状況」https://www.mof.go.jp/zaisei/financial-situation/financial-situation-01.html(最終閲覧日:2023年12月10日)

[4] 財務省(2023)「なぜ財政は悪化したのか」https://www.mof.go.jp/zaisei/financial-structure/financial-structure-02.html(最終閲覧日:2023年12月10日)

[5] 財務省(2023)「「借金」の問題点」https://www.mof.go.jp/zaisei/financial-situation/financial-situation-02.html(最終閲覧日:2023年12月10日)

[6] 財務省(2023)「高齢化により増大する社会保障関係費」https://www.mof.go.jp/zaisei/social-security-and-finance/index.html(最終閲覧日:2023年12月11日)

 

参考文献一覧

防衛省・自衛隊(2022)「防衛省・自衛隊の人員構成」https://www.mod.go.jp/j/profile/mod_sdf/kousei/(最終閲覧日:2023年12月10日)

Global Firepower(2023)「2023 Military Strength Ranking」https://www.globalfirepower.com/countries-listing.php(最終閲覧日:2023年12月10日)

外務省(1960)「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html(最終閲覧日:2023年12月11日)

山下慶(2022)「韓国の徴兵制が徴兵経験者に与える影響 : 「男になる」という言葉を中心に」,『地域政策科学研究』  19巻, pp.47-63.

NHK(2023)「韓国政府 国防予算案まとめる 北朝鮮核・ミサイルへの態勢強化」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230829/k10014177671000.html(最終閲覧日:2023年12月11日)

 

 

 

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